2026.8.27|代官山 蔦屋書店 SHARE LOUNGE
日本では、まだ「豆腐干(とうふかん)をご存じですか?」と尋ねるところから始まることの多い食材です。
けれど、北京で育った料理家のウー・ウェンさんにとって、豆腐干は、幼い頃から食卓にあった身近な存在でした。
2026年8月27日、代官山 蔦屋書店 SHARE LOUNGEで開催したトークショー「豆腐干をもっと身近に。ウー・ウェンさんから学ぶ伝統食材」。
聞き手を務めた田井れい花さんとの対話は、中国の大豆・豆腐文化から、植物性たんぱく質、季節の野菜、日々の献立へと広がっていきました。
「ウー・ウェンさんにとって、豆腐干はどんな存在ですか」。
その問いに返ってきたのは、とてもシンプルな言葉でした。
私の生活には、欠かせない存在です。
淡泊だから何にでも合う。炒めても、スープに入れてもいい。みそ汁なら、油揚げの代わりに入れることもある——。
ウー・ウェンさんにとって豆腐干は、特別な料理のための食材ではなく、暮らしのなかで自然に手が伸びる存在なのです。
1|大豆から広がる、豊かな豆腐文化
日本で「豆腐」と聞けば、絹ごし豆腐や木綿豆腐、油揚げ、高野豆腐などを思い浮かべる方が多いかもしれません。
豆腐は中国から日本へ伝わり、日本の食文化のなかでも長く親しまれながら、さまざまな形へ発展してきました。
一方、中国の大豆・豆腐文化はさらに多彩です。
トークでは、豆腐を圧搾して水分を抜いた豆腐干をはじめ、細く切った豆腐干絲、薄く延ばした豆腐皮、幅のある豆腐条、燻製の香りをまとわせた燻干など、さまざまな豆腐製品について、ウー・ウェンさんが紹介してくださいました。
料理によって形を選び、食べ方によって使い分ける。ひと口に豆腐干といっても、その形や食べ方はさまざまです。その背景には、中国で長く育まれてきた豊かな豆腐文化があります。
豆腐干がいつ生まれたのか、その正確な起源は現在のところ明らかになっていません。
ただ、中国には豆腐を強く圧して水分を抜く加工法が古くからあり、少なくとも明代の文献には、圧した豆腐を燻したり干したりする記録が残されています。清代の料理書には「腐乾」という名称と具体的な製法が現れ、18世紀末には細切りにした「腐乾絲」の記録も見られます。
日本ではまだ新鮮に映る豆腐干ですが、中国の大豆・豆腐文化のなかで長く育まれてきた食材の一つです。
2|「植物性たんぱく質」と考えると、もっと自由になる
ウー・ウェンさんの話を聞いていて印象的だったのが、豆腐干を「何かの代わり」として捉えていないことでした。
豆腐干というより、「植物性たんぱく質」というところから
考えていただいた方が分かりやすい。
中国では、多様な食文化や生活背景のなかで、大豆も大切な植物性たんぱく質源の一つとして食べられてきた、とウー・ウェンさんは話します。
だから、肉か豆腐干か、ご飯か豆腐干か、と二者択一で考える必要はありません。
実際、トークのなかでも、「たんぱく質だけで摂るのもどうかなと思う」「ある程度の炭水化物も必要」と、食事全体のバランスについて触れていました。
優食の豆腐干は、100gあたりたんぱく質23g、糖質1.8g。高たんぱく質・低糖質で、グルテンフリーの食材です。会場でも、こうした栄養特性について話が広がりました。
けれど、数字だけが豆腐干の魅力なのではありません。
肉も食べる。野菜も食べる。ご飯も食べる。そのなかに豆腐干もある。
いつもの食事に、植物性たんぱく質という選択肢を一つ増やす。そのくらい自然な距離感で考えると、豆腐干はぐっと身近になります。
3|「何料理か」を決めなくていい
優食ではこれまで、中華料理だけでなく、和食、洋食、エスニックなど、さまざまな料理で豆腐干を楽しむレシピを紹介してきました。
トークのなかで田井さんが、そうした使い方を「多国籍のアレンジ」と表現したとき、ウー・ウェンさんから返ってきたのは、少し意外な言葉でした。
多国籍アレンジと呼ぶ必要はありません。
植物性たんぱく質は、どんな国でも必要ですから、
どんな味付けをしてもよいのです。
「中国食材だから、中国料理に使う」。
そう決めなくていい。
みそ汁なら油揚げの代わりに。小松菜のおひたしに加えてもいい。炒め物にも、スープにもなる。淡泊で主張しすぎないからこそ、合わせる食材や味付けを邪魔しません。
これまで私たちは、「豆腐干はいろいろな料理にアレンジできる」と伝えてきました。
けれど、ウー・ウェンさんのお話を聞くと、少し見え方が変わります。
豆腐干を何か別の料理に“変身させる”のではなく、もともとどんな食卓にも入っていける懐の広さを持っている。
だから、料理の国籍を考える前に、
「今日は何と食べよう」
そのくらいの感覚でいいのかもしれません。
4|季節を連れてくるのは、隣にある野菜
トークの後半は、来場者からの質問へ。
「季節ごとのおすすめはありますか」という問いに、ウー・ウェンさんが挙げたのは香味野菜でした。
豆腐干は一年を通して変わらない食材。だからこそ、隣に置く野菜が季節を連れてきます。
調味料というより、素材同士で味付けができる。それが本当に最適ですよ。
たとえば、みょうがなら少しの塩とこしょう、ごま油で。
秋になれば、きのこと一緒にスープに。
きゅうりでも、小松菜でもいい。
食材そのものが持つ味や香りを組み合わせれば、複雑な味付けをしなくても料理になる。
そこには、ウー・ウェンさんが大切にしている家庭料理の考え方が垣間見えました。
手軽なものには、頑張って相手を探す必要が全くない。
豆腐干を買ったからといって、そのために特別な食材を探さなくていい。
冷蔵庫にあるものと合わせれば、一品になる。
料理のために暮らしを変えるのではなく、暮らしのなかに料理を置く。
そんな軽やかさが、豆腐干にはよく似合います。
5|暮らしに合わせて、好きな食べ方を見つける
来場者からは、豆腐干の形による使い分けについても質問が寄せられました。
「細いものと幅のあるものは、どう使い分ければいいですか?」
ウー・ウェンさんは、細いものはあえ物にしたり、焼きそばのように炒めたり。幅のあるものは鍋に入れても扱いやすい、と具体的な使い方を紹介しました。
同じ豆腐干でも、切り方によって食感は変わります。
それぞれの好みや、その料理に最適なものを見つけると、かなり広げられると思いますよ。
「どう食べるのが正しいか」ではなく、「自分ならどう食べたいか」。
そう考えると、豆腐干との付き合い方もずっと気楽になります。
下処理について質問が出た際には、優食のパンフレットを見ながら、ウー・ウェンさんご自身の普段の扱い方についても話が広がりました。
パンフレットは、本当に真面目ですよね。私は大雑把です。
その飾らない言葉に、会場も思わず笑顔に包まれました。
商品としておすすめする基本の調理方法はあります。
けれど家庭の食卓では、時間も、その日の気分も、家にある食材も毎日違います。
自分の暮らしに合う食べ方を見つけていく。そんな自由さも、豆腐干を日常にしていくためには大切なのかもしれません。
※優食の商品については、パッケージ等に記載された調理方法をご確認ください。
話を聞いたあと、実際に味わう
トーク終了後には、来場者の皆さまに豆腐干を使ったメニューを試食していただきました。
この日用意したのは、優食のレシピ「豆腐干と野菜の黒酢中華サラダ」。
細切りの豆腐干に、キャベツやきゅうり、にんじんなどの野菜を合わせ、しょうゆ、酢、ごま油などであえた、さっぱりと楽しめる一品です。
中国では、細切りにした豆腐干を野菜や調味料とあえる料理は、「涼拌干絲(リャンバンガンスー)」などと呼ばれ、日常的に親しまれています。
今回の「豆腐干と野菜の黒酢中華サラダ」も、そうした豆腐干の定番的な食べ方につながる、優食のレシピの一つです。
トークのなかでウー・ウェンさんが繰り返し話していたのも、豆腐干の“手軽さ”でした。
淡泊だから、野菜や調味料となじむ。特別なことをしなくても、一品になる。
言葉で知ったあとに実際に味わうことで、豆腐干をより身近に感じていただく時間になりました。
いつもの食卓から、家族や友人へ
トークの最後、ウー・ウェンさんは来場者に向けて、こう語りました。
豆腐干は、新しい食材ではありません。
そして、中国で長く食べられてきた食材だからこそ、今の時代にも合っている。ぜひ身近に、食卓にたくさん出してほしい、と続けました。
日本では、まだ目新しく映る豆腐干。
けれど、ウー・ウェンさんにとっては、幼い頃から食卓にあったものです。
今回のお話を聞きながら、私たちが豆腐干を日本に届けるということについて、あらためて考えました。
それは、珍しい食材を新しく紹介することだけではないのかもしれません。
中国で長く育まれてきた食文化を大切にしながら、日本の今の暮らしへ、無理なくつないでいくこと。
みそ汁に。
おひたしに。
季節の野菜と一緒に。
「豆腐干を使った料理を作ろう」と構えるのではなく、いつもの食卓に、ごく自然に豆腐干がある。
そんな風景を、少しずつ増やしていけたらと思います。
トーク終了後には、ウー・ウェンさんの著書を手にした来場者との交流も続きました。
最後に、トーク終盤でのウー・ウェンさんのこんな呼びかけで締めくくりたいと思います。
ご家族やお友達にも、ぜひ豆腐干を広めてください。
お足元の悪い中ご来場いただいた皆さま、本当にありがとうございました。
EVENT INFORMATION
「豆腐干をもっと身近に。ウー・ウェンさんから学ぶ伝統食材」
開催日:2026年8月27日
会場:代官山 蔦屋書店3号館2階 SHARE LOUNGE イベントスペース
ゲスト:料理家 ウー・ウェンさん
聞き手:田井れい花さん
ウー・ウェンさん|料理家
北京生まれ。1990年来日。中国に伝わる家庭の味を、日本の食材で手軽に作れるよう工夫して紹介。1997年に東京でクッキングサロンを開始し、小麦粉料理や中国家庭料理を中心に、体をいたわる暮らしの知恵を伝えている。雑誌、新聞、テレビ、書籍など幅広く活躍。


